○◎ Great and Grand Japanese_Explorer ◎○
○ 南極の凍った湖に潜って、原始地球の生態系を追う =田邊優貴子= ○
◇ ◆ 第3回 南極の洗礼 =1/2= ◇◆
南極の朝はミルク粥から始まった。
みな、至極当たり前にミルク粥を皿に盛って、砂糖とシナモンをかけて食べている。 正直なところ、私はミルク粥が好きではない。 牛乳も米も私の大好物だからこそ思うのだ、何ゆえに、米をミルクと砂糖で煮て、こんなふうにしてしまうんだろう・・・と。
北極スヴァールバル諸島での調査の時もよくミルク粥が出るが、いつもそれを避けて他のものを食べてきた。 しかし今回はそうはいかないようだ。何せミルク粥の他には紅茶とコーヒーしかないのだから。
隣りに座るクレメンスを横目で見ると、ミルク粥に砂糖とシナモンばかりか蜂蜜まで加えているし、目の前のデイルに至ってはチェリージャムとヨーグルトを加えている。 そんなわけで、私も周囲に合わせて何食わぬ顔でモリモリ食べた。 これはもしかしたら、今回の南極で私に課された大きな試練なのかもしれないとさえ思った。
ノボラザレフスカヤ基地
気温マイナス18℃。私たちはロシアの南極基地の一つであるここノボラザレフスカヤ基地で、アンターセー湖調査の準備を整える。 移動のためのスノーモービルを整備し、保管している荷物と、持ち込んだ荷物を雪上車に積み込む。
その間、寝泊まりするのは、基地の中心から徒歩15分ほどの外れにあるゲストハウスだ。室内とは言え、昨晩寝る前の室温はマイナス10℃。 まだ寒さに体が慣れていなくてあまり眠れなかった。 ゲストハウスは夏の間だけ開かれるのだが、全部で3棟建っていて、そのうち1棟には管理人的なロシア人夫婦・ルーニヤとナディアの部屋とダイニングがある。
この夫婦も私たちと同じイリューシン第1便で到着したので、ゲストハウスの出入り口には雪が吹きだまり、裏の湖から補給する水もまだ開通していない。 とりあえずアンターセー湖へ出発するまでの間、朝食だけはそこで、昼食と夕食は基地の食堂でとることになった。
ノボラザレフスカヤ基地ではメールが出来ると事前に聞いていたので、昭和基地のように普通にインターネットがつながっているのだろうと思っていたのだけれど、それはガセネタだった。 確かに食堂に共用パソコンがあり、メールが出来るのだが、添付ファイル無しの普通の短いメールを送るだけで10分。 デイル曰く、「2年前に50kBのファイルを添付して送ったら、時が永遠に感じられた」らしい。
まあ、メールが出来ないくらい別にどうと言うことはない、と思っていると、基地の要所要所にテレビが設置されており、ロシアのテレビ番組が流れている。 録画だろうと思ったが、リアルタイムに衛星で繋いでいるそうだ。 ロシア人的にはインターネットより、テレビのほうが優先度が高いのかもしれない。
1日目:荷物を運び出す
曇り空だが風があまりない天候の中、調査に向けての準備作業を開始した。 やることは山のようにあった。 まずはゲストハウス玄関前の雪の壁をシャベルやチェンソーを使って切り崩したり、1年間動かしていなかったスノーモービルの整備をしたり、基地の一角にある小屋に保管している荷物から必要なものを捜索したりする。
私は小屋の荷物を運び出す班へ加わった。 高台にある古びた小屋まで行き、入り口の南京錠を開けたのだが、凍りついた扉は全くもってびくともしない。 雪かきシャベルでガンガン叩き、なんとか扉を開けると、今度は雪と氷の壁がそびえ立っていた。 3人で力を合わせて氷と雪をかき出し、30分ほどでやっと中に入ることができた。
薄暗い小屋の中には驚くほど大量の荷物がぎゅうぎゅうに押し込められていた。 何から手をつけてよいのやら、途方に暮れかけていると、
「Hey, ユキコ!これを外へ!ほら、これも!これもだ!」 とデイルからどんどんと謎の荷物を手渡される。
謎の黒い袋、謎のドラム缶、大量の黒い箱。 私はその中身が分からないまま、ロボットのようにひたすら荷物を小屋の外にいるブラジミルとアリソンに渡していった。 寒いだろうとダウン入りヤッケを着ていたのだが、すぐに汗をかき始め、私はもはや薄手の長袖2枚だけになっていた。
途中、昼食をはさんで、ただただ小屋から荷物を出し、スノーモービルでゲストハウスの前まで運び続けた。 気づくといつの間にか19時。 すぐに夕食の時間になってしまい、南極の初日が終わった。
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・・・・・・山を彷徨は法悦、その写真を見るは極楽 憂さを忘るる歓天喜地である・・・・・
森のなかえ
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